社会福祉法人大阪市社会福祉協議会・大阪市ボランティア・市民活動センターのスタッフブログです。




2014年9月24日水曜日

 【市民フォーラムおおさか】 災害図上訓練ゲーム『LODE』研修会のご報告


市民フォーラムおおさか(事務局:大阪市ボランティア・市民活動センター)では、6月・7月・8月と3回にわたり、新しい災害図上訓練ゲーム『LODE(ロード)』の研修会を、「生きる力を育む研究会」共同代表の南部美智代さんを講師にお招きし開催しました。遅まきながらその内容について簡単にご報告させていただきます。
南部 美智代 さん
研修会にご参加の皆さん








                  

~まずDIGを体験してみよう~
住宅地図等をつなぎ合わせた地域マップの上に、避難所や公衆電話、危険場所、要援護者の所在等の地域情報をマーキングし、災害発生時をイメージして、避難経路や事前対策等をシミュレーションする災害図上訓練ゲーム『DIG(Disaster Imagination Game)』は、阪神大震災後、学識者・行政関係者・災害ボランティアなどいろいろな人々の知恵と試行錯誤により生まれ、全国的に広がっていきました。
まず手始めにDIGを体験しました
災害を想定しいろいろな情報を書き込み…











DIGをすることで、以下の3つの事柄を知ることができるのではないでしょうか。
  ①「自分の地域で起こりうる災害を知る」こと
  ②「自分のまちの災害に対する強さ・弱さを知る」こと
  ③「頼りになる人・支援が必要な人を知る」こと
防災図上訓練ゲームは異なる想定のもと何度もシミュレーションすることが大切です
しかしDIGは、ゲーム内容的に防災に特化した部分が大きく、災害時、もっとも困難な立場に立たされてしまう人々(災害弱者)についての配慮や理解に関しては、十分考察することができず、また、アパート・マンションなどの中高層住宅が多い地域においては、立体的な情報がうまく図示できず対応しづらい、という2つの課題がありました。

~DIGからLODEへ~
そこで南部さん達、「生きる力を育む研究会」のメンバーが中心となって『災害時に支援が必要な人々のことをもっと学ぼう』、『災害弱者の避難について考えよう』、『防災だけでなく地域の見守りにもつなげていこう』、『中高層住宅でも対応できる防災訓練ゲームをつくろう』という思いでもって、それらの課題をクリアできる災害図上訓練ゲーム『LODE(ロード)』が考案されたのです。
『LODE(ロード)」とはつまり、
ちいさき者Little people)】も【老いたる者Old people)】も【障がいのある者Disabled people)】も【みんなで避難Evacuation)しよう】の頭文字をとって命名され、【みんなで生きていける社会をつくろう】という意味が込められています。

LODE(ロード)マップづくりに必要なもの
①マンションや団地の簡易立面図
・実際にある建物の簡易立面図を作成する。部屋だけではなく、階段やエレベーター、廊下、連絡通路などの情報を盛り込んだものをご用意ください。
エクセル等で作成しA0サイズに拡大したものをグループごとに用意します
②凡例シールと凡例表
・LODEマップでは、簡易立面図の各部屋に、そこの住人の情報を記載していくのですが、個人情報保護への配慮等から、凡例表に則して各戸に凡例シールを貼って住民情報を記載していきます。シールについては、男女で色分けするのはもちろん、前期・後期高齢者や、心配のある人(身体・精神のある人、子ども、妊婦、赤ちゃんなど要援護者の区別ができるようにそれぞれ個別のシールを用意しておきます。100円ショップなどで購入できるシールを利用するとよいでしょう。
凡例表の一例です
その他、マジックペンや付箋などの筆記用具や、DIGで使用するような地域地図、立面図の大きさにあった透明ビニールシートをご用意くさださい。

~では実際にLODEを体験してみよう~
今回の研修では、架空のマンションの簡易立面図を用意して、住民情報もこちらが用意した架空のものを入れ込んで、グループワーク形式でLODEを行いました。(本来は、実在する高層住宅の住民たちが集まって、自分達の地域のことを考える、住民参加型のものです)

①簡易立面図の各部屋に、「ここの住人はこういう人だ」と分かるように、凡例に則してシールを貼っていきます。(住民同士で情報を出し合ってわかる部屋だけでよい)

②シールの貼り付けが終わったら、地域で指定されている緊急避難所、公衆電話などの場所を地域地図でわかる範囲で確認します。

③住民情報が埋まったら、火事や地震、津波などの災害の発生のシミュレーションをします。発生日時・場所、天候や気温、風向き等、なるべく詳細に想定します。

④想定・設定された災害時において、住民達が(特に災害弱者と思われる人々が)早く、安全に避難できる方法やルートを、参加者で話し合います。

そして、マップづくりの場は1度だけではなく、何度も行うことで情報の精度を高め共有化していくことができると思われます。
各戸に住民情報のシールを貼っていきます
独り暮らしや高齢者世帯が一目で分かります
災害時、心配のある人を救うには?
情報が空白の部屋にはどういう対応をすれば…
 また『LODE』では、現在の状況を考察するだけでなく、将来起こりうる状況も考えることができます。現在の簡易立面図の上に透明ビニールシートをかぶせることで、例えば、5年後を想定した、各戸の住民情報を再度貼り直すができ、その違いを比較することができます。
・『5年後だと、住民の半分くらいが前期高齢者以上になってしまうなぁ…』
・『今は家族と住んでいる若者たちも就職や結婚でここを離れてしまうかも…』
・『このままだと独り暮らしの住民がかなり増えそうだな…』
   といったような、住民たちの身体の変化、経済的状況、社会環境や情勢の変化
   などを想定して、将来を垣間見ることができるのではないでしょうか。
5年後のマンション住民の状況にどんな変化が?

見えていなかった問題が見えてくるはずです
~LODEの真の目的とは~
LODEはマップを埋めて、住民情報の精度を高めて共有化するだけが目的ではありません。
LODEはDIGのような災害時の緊急避難を目的としたものではなく、住民の学びあいの場の提供を目的とした災害シミュレーションであり、地域の見守り体制づくりに利用することができます。また、それ以外にも、認知症や高齢者への理解』、『発達障がいを含めた障がいへの理解』を学んだり、『集合住宅における犬猫等のペット飼育問題』などを考える機会としても有効だと思われます。
新しい気づきがあったのではないでしょうか
住民が主体となり話し合う場が必要です
南部さん、お忙しいところ有難うございました!
市民フォーラムおおさかでは、今回学んだ『LODE』を防災・減災、そして地域コミュニティづくりの1つの新しいツールとして、広く役立てていけるよう、今後も取り組んでまいります。(荒野)