社会福祉法人大阪市社会福祉協議会・大阪市ボランティア・市民活動センターのスタッフブログです。




2012年9月16日日曜日

盲ろう者の料理教室が大阪ガスと初の連携で実現☆

皆さんは「盲ろう者」をご存知でしょうか?

「グリルでゆで卵」の様子を触って確かめる盲ろうの皆さん
「盲ろう者」とは、
あのヘレン・ケラーと同じ、目と耳の両方に障がいを持つ人たちのことをいいます。

去る9/5(水)、そんな盲ろう者の支援団体、NPO法人大阪盲ろう者友の会が運営する
「手と手とハウス」(大阪市港区)の利用者14人(+介助者14人)と手話サークル帆船のメンバー4人が、港区社会福祉協議会(ボランティアコーディネーター・荻野さん)のコーディネートにより、大阪ガス㈱大阪リビング営業部コミュニティ室と大阪ガスクッキングスクール淀屋橋(運営㈱アプリティーセサモ)との連携・協力で、初の盲ろう者向けお料理教室を楽しまれました!

「目と耳に障がいがある人たちのお料理教室?!」

最初に、荻野さんから今回のお話をお聞きした際に、私がまず思ったのは「目と耳に障がいがあって、どうやってお料理するんだろう?」という素朴な疑問でした。ところが、調理の様子を実際に見学して、当初抱いていた疑問は氷解! 

盲ろう者の皆さんが、介助者の皆さんと一緒になって、本当に楽しんで料理をされている様子を拝見し、こちらの頬も緩みっぱなしの、笑いの絶えない、喜びに溢れた時間を共有させていただきました♪

触手話で手順を伝えます
盲ろう者は、一人にひとりの介助者が必須です。「離れていたら伝わらない」ため、盲ろう者と介助者はぴったりと寄り添って行動されます。様々な情報は「触手話」や「指点字」といった、常に手と手を触れ合わせるコミュニケーション法で伝えられます。
その様子は、仲良しの幼い子どもたちのよう。
とても微笑ましい光景です。

この日のメニューのテーマは「秋かおる和風」。
①ほうれん草とえのき茸の柚子風味(和え物)に始まり、②里芋のコロッケ・ウニソース添え、③沢煮椀(たっぷりの野菜の千切りと豚肉の吸い物)、④きのこご飯、⑤水ようかん・黒ゴマ風味、の秋の香りいっぱいの5品です。
大阪ガスクッキングスクール淀屋橋・松石チーフが、「手と手とハウス」増田さん・松本さんとの事前打合せを踏まえて組み立てられました。

とても全盲とは思えない包丁さばき!
「盲ろうの方は、目と耳以外の感覚―嗅覚・味覚・触覚が非常に優れているとのお話を聞き、1品ずつ香りを楽しむ食材を必ず加え、芋をこねるといった触覚を楽しめる要素も取り入れました。事故防止から包丁を使うことは最小限に、と最初は考えたのですが、”調理した感”も味わってほしいと思い直し、野菜を細かく刻む工程も残しました」(松石チーフ談)

大阪ガス㈱大阪リビング営業部コミュニティ室および大阪ガスクッキングスクール淀屋橋では、CSRの一環として毎年2~3回程度、視覚障がい者のための料理教室を実施しておられます。

ただ、今回は視覚+聴覚の2重の障がいをお持ちの方が対象。
荻野さんから今回の依頼を受けたときは「お受けしたい気持ちはやまやま。でも簡単に引き受けて大丈夫だろうか…と思いました」(大阪ガス㈱大阪リビング営業部コミュニティ室・西村主任談)。
しかし、関係者間で検討を重ね、当初依頼の出張料理教室というカタチではなく、大阪ガスクッキングスクール淀屋橋内での実施とし、現場スタッフの数も通常の倍の人数で対応するということで調整がつき、今回の料理教室が実現しました。

炒める!盲ろう者
実施してみると、下準備等は通常のクッキングスクールの場合とほぼ同じだったのにもかかわらず、約1時間30分、予定通りの時間内で5品が出来上がり、スタッフの皆さんが驚くほどの手際のよさ。

それもそのはず、「手と手とハウス」では、週に1回、小さなキッチンでの調理実習を利用者の皆さんで楽しんでおられるのだそう。松本さん曰く「嗅覚・味覚・触覚の優れた盲ろう者は、お料理が大好き! また、健康オタクも多いんですよ~」。
今回の料理教室も、利用者の皆さんからの「自分たちの好きな料理で、新しい世界を見たい!!」との熱烈な思いが発端になっています。
広々とした、最新の調理器具の並ぶ本格的なキッチンでの調理体験に、皆さんの喜びも一入です。
「盲ろう者が、自分で最後まで作るという体験ができとてもよかったです。以前からお料理教室を開いてほしいと要望がありました。今回、実現できたことがとてもうれしいです」。盲ろう者は一般の料理教室に参加することが難しい中、「今回、大阪ガスのコミュニティ室が受け入れてくださったことで一歩開くことができたのではないかと思います」と増田さん・松本さん。

完成したお料理のお味は、もちろん太鼓判の美味しさ!盲ろう者さんからも「薄味でヘルシーなのに、香りでしっかりカバーされていてとても美味しくいただけた」とのご感想。
みんなで美味しくいただきました♪
また、「お鍋やフライパンから立ちこめる香りに秋を感じた…」という感想もあり、松石チーフの思いがしっかり伝わっていたことに「感動しました」と荻野さん。

他には「介助者がやはり素晴らしい。伝えたい内容がきっちり伝わっているからこその運びです」 や「グリルでゆで卵には本当にみんなが驚いていた。そんな面白みも含んだ内容が素敵だった」とのご感想も。

盲ろう者対象の料理教室は初めて、ということで、大阪ガス社内の関連部門や㈱アプリティーセサモの社長さんなど、何人もの方が途中、見学に来られていました。
開始早々は固かった関係者の方々の表情も、途中からは、盲ろう者の皆さんの楽しそうな様子を見て緩みはじめ、事故なく予定通り終了したことで一様にホッとされておられたのがとても印象的でした。西村主任も「初めての経験で大変不安な気持ち」でしたが「大変貴重な体験をさせていただいたと感謝しております」と仰っておられました。

このような小さな「初めて」が積み重なって、障がいのある人の暮らしや社会が変わっていくのだなぁと実感させてもらった、今回の素敵な料理教室でした。

しかし、「グリルでゆで卵」には、私もびっくりしましたー!!
(作り方を知りたい方は、ぜひボラセン・市居までお問い合わせください~♪) (市居)



※なお、より詳細な当日の様子が港新聞(9/15号12-13ページ)に紹介されています。
 こちらもぜひ御覧ください↓↓↓
http://osaka-minatonews.sakura.ne.jp/pdf/2012/0915-157/0915-157c.pdf